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プロジェクトX 農業機械の開発にかける男たち
激闘重粘土壌に挑め 南西諸島赤土ばれいしょ(じゃがいも)の土を落とせ2
激闘編   平成14年度

 


■乾燥機の作成
下から送風する簡易乾燥機
 平成14年秋,いもの植え付けも終わり,試験のことを考え始めた黒木であった。
土落し機が十分に性能を発揮するためには,いも表面に付着している土が十分に乾燥しなければならなかった。これまで乾燥させる方法はなかった。自然乾燥では,着土壌が乾燥するのに条件が悪ければ20日以上付かかった。安く簡易に導入できる乾燥機が欲しかった。乾燥機メーカーの製品はどれも良かったが,高価で導入できなかった。
 黒木は,誰でも安く手に入る乾燥機を作らなければならなかった。骨を作り使い古しのビニールをかけ3日間送風乾燥させたが,いもの品質は劣化し乾燥しなかった。自信があっただけに落胆は大きかった。
 黒木は作物研究室室長神門に相談した。「下から送風して上に風を抜けば乾燥する。穀類の昔からの乾燥装置はそうなっていた。」神門は教えてくれた。黒木は自分の作った失敗作に自信があっただけに,神門の助言に半信半疑だった。その日から3日間かけて乾燥機を作った。サイズを測り,500kgのじゃがいもが乾燥できるような装置にした。じゃがいもを掘り,1晩乾燥させた。次の朝いもを見ると付着土壌は乾燥して,ぼろぼろになっていた。神門の教えは正しかった。「これならいける」黒木は確信した。あとは,あの男たちが来るのを待つばかりだ。
掘取り直後の湿った土 乾いた付着土壌


■松山株式会社開発部来場
 平成15年2月,今年もあの男たちが来た。新設計になっている2台の試作機を携えていた。
いもの土を落とす作業
機械はシンプル,小型化になっていた。昨年,手作業でしか加工できなかったブラシもイボゴムを張り付けて持ってきていた。
 徳之島では,植付の早かった生産者が掘取りを始めていた。手作業で1個1個の土を落とす作業は,かがんで行わなければならず,生産者を苦しめていた。
 本年度の開発は,土落し部のみを集中的に改善していくことが決定した。まず、縦軸イボゴム式をテストしてみた。丸いもには適応性は良かったが,長いもには不向きだった。
 去年テストをほとんどしなかった横軸ブラシ式のブラシを,イボゴムに変えテストしてみた。乾燥機で乾燥させたいもの土は,面白いように落ちた。しかし乾いた土により粉塵が起こった。新たな問題だった。
 湿った土,中途半端に乾いた土は,乾燥機にかけた土ほど落ちなかったが,当初の開発目標はクリアしていた。しかし,4人は満足しなかった。どんな条件でも,生産者に満足してもらえる機械にしたかった。
2台の試作機比較 新縦軸イボゴム式



■じゃがいもの皮剥け多発
 しかし,問題はそれだけではなかった。じゃがいもの皮剥けがひどかった。昨年では,見られなかったひどい状態になった。4人は落胆した。
 島内の生産者の畑を見に行くと,手作業にもかかわらず,いもの皮が剥けていた。選果場でも皮が剥けたいもがあった。どこまで皮が剥けたら駄目なのかわからなくなった。 黒木は,皮が剥けたいもをサンプルとして東京の遊楽館に送った。そこにはかつて,徳之島農業改良普及センターで,野菜の担当をしていた増田がいた。
 増田は,東京の市場5社にいものサンプルを持っていき意見を聞いた。意外な解答が帰ってきた。皮剥けは都会ではあまり気にしていなかった。
 増田の解答を受け取った黒木は,緊急に会議を開いた。解答を見て,皮剥けは,あまりひどい場合以外気にしなくてもいいことがわかった。



■湯原の活躍
湯原は新婚だった。新妻を長野に残し2ヶ月間の出張はつらかった。毎晩,黒糖焼酎を浴びるように飲んだ。家計費はかさんだ。新妻は,遠くにいる夫のために,家計をやりくりしてじっと耐えた。
 滝沢もまた家族を長野に残しての出張だった。雪かきもしなければならなかった。家族のことが心配だった。2月から4月まで過ごす徳之島は5年目だった。花粉アレルギーの滝沢は,花粉の時期に長野にいないため快調であった。それだけが唯一の救いだった。毎晩,飲んでからホテルに戻り家族に電話した。子供と電話で話をした。次の朝,飲み過ぎて電話の内容は覚えていなかった。奥さんに電話をかけ,どんな話を子供としたのか確認した。奥さんは何も言わなかった。
黙々と機械を作る ラインの様子
 
 


■戦士の休息
アオサ海苔採り
滝沢と湯原は,徳之島に来たからには,アオサ海苔を採って家の家族に送りたかった。
横軸ブラシ式にイボゴムローラ

 久しぶりの日曜日,半日だけ作業を休み海苔を採りに海に出かけた。海一面に広がったアオサ海苔を見て,どれを採っていいのかわからなかった。溜池に電話してどれを採っていいのか聞いた。目の前に広がっている緑の物は全てアオサ海苔だった。
 地元の人が,アオサ海苔を取る手つきを見て滝沢はこれだと思った。強くかき出すだけでは駄目なんだと気づいた。横軸ブラシのローラの回転の早い遅いが逆だと気づいた。しかしそれを加工し直すことは不可能だった。
 来年度へ持ち越すことになった。粉塵は,乾燥機の送風機で風を送ることで対応した。今年度の結果で,横軸ブラシ式に絞って来年度は開発していくことが決定した。来年度は開発の最終年度だった。松山株式会社と徳之島支場で土落し機を製品として世に送り出すための秘策が練られた。




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