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プロジェクトX 農業機械の開発にかける男たち 激闘重粘土壌に挑め 南西諸島赤土ばれいしょ(じゃがいも)の土を落とせ 1 戦いの始まり 平成13年度 |
■前提条件 どうにか機械化できないか 徳之島,沖永良部は赤土ばれいしょ(じゃがいも)の生産地
掘取りの2から4月は雨が多いため出荷が不安定
島の粘度のような土はいも表面にべったりと付く
出荷するためには1個1個手作業で土を落とさないといけない
土落しに膨大な時間と労力を使うことになる機械化できなかった理由 今までの機械では傷,皮剥けが起こり使えない
赤土が少し付いていないといけないのでいもは水では洗えないプロジエクトの始まり 鹿児島県農業試験場徳之島支場作物研究室と松山株式会社
で土落し機を事業で共同開発する事になる機械の開発条件 期間は3年間平成13年度から15年度まで
土が落ち,傷も付かない
100万円以下で販売主な登場人物 徳之島支場 作物研究室室長神門
溜池主任研究員
黒木研究員
松山株式会社開発部 係長滝沢,湯原,和田
■戦いの始まり | ||
平成13年秋,黒木研究員は試験に使うためのじゃがいもを植えていた。2月から始まるじゃがいもの土落し機の実験のための材料にするためだった。鹿児島県の南西諸島(徳之島,沖永良部)では場所により赤い粘土が島を覆っていた。
しかし,赤土じゃがいもの生産農家にとってその土はやっかいだった。機械を使えば皮が剥け,傷が付くために1個1個手作業でいもの表面についた赤土を落とす以外に方法はなかった。じゃがいもの出荷時期の2月から4月は雨が多く作業は困難を極めた。雨が続くと掘取り作業が出来ず出荷はなく,晴れると大量のいもが出荷され出荷担当者,県の農業担当者,市場を悩ませた。 土落しの機械化は島民,農業関係者の悲願だった。そこに二人の男が立ち上がった。 |
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中小規模じゃがいも生産者が導入できる100万円以下の機械の開発が求められていた。大村の中には機械の構想はあった。しかし平成13年春,大村は機械の開発を待たずして県庁へ転勤となった。 平成13年4月,大村の後任で赴任してきた者は機械のことを知らなかった。しかし本人の希望で,徳之島支場に来た黒木研究員であった。残された溜池は機械の使い方から,溶接の仕方まで黒木に手取り足取り教えた。戦力不足になった。溜池は悩んだ。仕事は山ほどあった。まずは,じゃがいものことを任せてみようと思った。 |
■試作機はいかに | ||||
2月中旬松山株式会社の開発部係長滝沢と湯原の2名が徳之島に入った。彼らが作ってきた2台の試作機があった。 黒木のじゃがいもも順調に育っていた。開発試験は始まった。一台はGZ800−KNの土落し機能をそのまま応用した縦軸イボゴム方式であった。 もう一つは,タマネギの玉磨き機を使用した横軸ブラシ式であった。GZ800−KNで実績のある,縦軸イボゴム方式で簡単に土は落ちるだろうと滝沢は思っていた。 しかし土は思ったように落ちなかった。滝沢は愕然となった。「1からやり直しだ。」観察の結果,掘取りから土落しまでに早くても三分以上かかる。そのわずかな時間の間に土が硬くなってしまうことがわかった。横軸ブラシ式はブラシの間に土が詰まり駄目だった。縦軸イボゴム式に絞って開発していこうと,そこにいた3人は思った。 |
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■鬼の職人登場 | ||||||
でもどうすればいいのかいい方法が思いつかなかった。時間ばかりがすぎ3月になった。ある程度の条件では土は落ち,傷も若干少なくなっていた。3人はすこし安心していた。
そのとき徳之島支場に電話の音が鳴り響いた。あと一人松山株式会社から助っ人が来るとの連絡だった。 3月のある日,松山株式会社から和田が徳之島に来た。和田は定年していたが委託職員の形で会社に残っていた。機械一筋の筋金入りの開発者だった。和田は機械の出来に満足しなかった。若い3人にげきを飛ばした。「今まで何をしていたんだ」安心していた3人は震え上がった。 「1から徹底的にやり直せ」和田は厳しかった。それから来る日も来る日も材料となるいもを掘り続けた。 溜池はじっと見ていた。 |
■かすかな希望 | ||
ふと目をやると,ものにならないと思っていた横軸ブラシ式がそこにはあった。縦軸イボゴムでは様々な素材を試したが,横軸ではまだ何もやっていなかった。 「ブラシをイボゴムに変えたらどうなるのかな?」湯原と黒木は話していた。それを聞いていた滝沢はそれだと思った。徳之島支場にはブラシを加工する設備はなかった。作業は難航したが,手作業でブラシをイボゴムに張り替えた。 詳細なデータは取れなかったが,結果は良かった。しかし,4月になりいもの季節も終わり来年度へ持ち越しになった。 横軸ブラシ式が使えそうなことがわかり,和田も少し安堵の表情をしていた。 |
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